【合衆国ニッポンポン!!】『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』著:ピーター・トライアス【サクッと紹介】
紹介補足
『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』はおそらくピーター先生初の翻訳作です。日本で発売した当初はカッコよすぎる表紙で話題になったのを憶えてます。
翻訳は中原尚哉先生でSF作品を中心に翻訳されている方で自称「スぺオペ(スペースオペラ)翻訳業者」です。中原先生の翻訳作品は初めて読みましたが独特な世界観にもかかわらずかなり読みやすくじっとりと湿気のある良い作品に仕上がっていました。
●ピーター・トライアス先生の他作品
『メカサムライ・エンパイア』上下(ハヤカワ文庫)
読みどころ①巨大ロボットはあまりでない!でも超面白い!
この表紙を見ると「あ、巨大ロボがドッタンバッタン大騒ぎする作品だな」って思って買いますよね?僕も『パシフィックリム』みたいなのを想像して買って読みました。でも全然巨大ロボがでない!いやでてくるけどチラッと姿を見せるだけで中々暴れてくれない!そして気が付きました「あ、これ巨大ロボメインの作品じゃない」ってことに。正直ガッカリしました。読んでる途中で文庫をブン投げそうになりました。でもブン投げずに今この作品の紹介記事を書いています。つまりどういうことかと言いますと、超面白かった!!!!
先程も書いた通りこの作品は「巨大ロボがメインの作品ではない」です。個人的に感じたことですが、この作品にはピーター先生の「好きなものへの愛」が詰まっています。様々なジャンルの傑作をリスペクトし組み合わせ混ぜ込み、そこへ隠し味に愛をドカ盛り(隠れてない)そんな作品です。だからこの作品は色んな読み方ができ、読者の様々な感情を引き出してくれます。「戦争小説」としても読めるし「家族愛・ヒューマンドラマ」としても面白いですし「謀略スパイアクション」的な要素も含んでます。もちろん「巨大ロボ」も描写は少ないですがインパクトのある暴れっぷりでした。誰が読んでもどこかに刺さる良い小説でした。
ここまで風呂敷を広げると最後に収拾つかなくなりそうですが、そこはピーター先生の腕の見せ所。溢れる愛は技術でカヴァーされており、違和感を感じることなく最後まで気持ちよく読めました。特にラストシーンは予想外で形容しがたい気持ちになり僕は好きだったので是非読んでいただきたいです。
読みどころ②熱気と湿気に満ちた合衆国ニッポンを冴えないおっさんが駆け巡る
個人的に主人公が冴えない中年のおっさん軍人(検閲官)なのが最高に好きでした。同期はみんなドンドン昇進していくのに主人公は大尉どまり。特技はナンパの最近下っ腹と体力低下が気になりだしたアラフォー主人公、最高ですね。このおっさんがどう活躍していくかはネタバレ防止のため割愛させていただきます。続きは本編で!
世界観も面白いかったです。第二次世界大戦で日本やドイツなど枢軸国側が勝利しアメリカの一部を日本が統治している世界観です。「電卓」と呼ばれるなんか凄いスマホみたいなものや巨大ロボなどが普及している若干サイバーパンクチックな分部もあります。
一番注目したいのはやはり「日本」の描写ですね。日本の素敵な描写からありがちなベッタベタな外国人の勘違い描写(恐らくわざとそう描写してる)と日本人のお国柄独特な闇と悪い癖まで丁寧に近未来SFに組み込まれています。日本通で知られるピーターさんですが「ホントにこの人日本好きだな」というのが端々に見てとれます。良い所はもちろん悪い所も知った上でも好きと言えるのは本当にそれが好きだからだと僕は思います。嬉しいですね。
まとめ
以上、『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』の紹介でした。「巨大ロボットは興味ないなー」と思って読むのを見送っていた人や初めてこの小説を知った人などにこの記事を通じて読んでもらい楽しんでいただけたらと思います。個人的に『メタルギアソリッド』シリーズにも近いモノを感じたのでメタルギア好きな方は特に楽しめるんじゃないかなと思います。是非楽しんでください。
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